大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

那覇地方裁判所 平成5年(ワ)539号 判決 1996年3月28日

主文

一  被告は、原告らに対し、それぞれ金三六万円及びこれに対する平成五年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その三を被告の、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

理由

【事実及び理由】

第一  請求

被告は、原告らに対し、それぞれ金一二〇万円及びこれに対する平成五年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、沖縄県における全国植樹祭の開催に反対する原告沖縄県学生自治会連合(以下「原告県学連」という。)及び原告琉球大学学生会(以下「原告学生会」という。)が、植樹祭開催反対の集会を開くために、被告に対し、その管理する四公園の使用許可を申請したところ、被告村長がこれを不許可処分としたため、被告に対し、右不許可処分の違法性を主張し、国家賠償法一条に基づく損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等

1 原告県学連は、沖縄県内の大学学生自治会の連合体であり、法人格を有しない団体である。

2 原告学生会は、琉球大学の学生により組織された学生の自治会であり、法人格を有しない団体である。なお、原告学生会は、原告県学連の傘下団体である。

3 被告村長比嘉秀雄(平成五年当時。以下「被告村長」という。)は、被告を代表し、豊見城村公園条例(以下「本件条例」という。)により、被告が設置する公園を管理し、その使用許可、不許可その他の処分をする権限を有する、被告の公権力の行使に当たる公務員である。

4 沖縄県糸満市において、第四四回全国植樹祭(以下「植樹祭」という。)が平成五年四月二五日に開催されることとなり、天皇、皇后が右植樹祭に出席するため、沖縄を訪問することとなった。

5 原告県学連は、原告学生会を含む加盟自治体とともに、天皇来沖、植樹祭開催反対の運動に取り組み、植樹祭開催当日の平成五年四月二五日に、植樹祭会場の近くで、天皇来沖、植樹祭開催反対の集会、デモを行うこととした。

6 金城敏政は、同年三月二五日、原告らの委任を受け、被告村役場を訪れ、次のとおり、被告村内に所在する平和台児童公園、宜保児童公園及び高嶺児童公園(以下、併せて「三児童公園」という。)の使用許可申請書を提出した。

申 請 者 琉大学生会 木村康夫

行為の目的 集会

行為の内容 反戦・平和をアピールするため

行為の期間 平成五年四月二五日午前八時から午後五時まで

集会参加人数 約三〇ないし四〇名

7 更に、金城は、同年三月二六日、三児童公園の集会参加人数を約一〇〇名に訂正し、それに加えて、次のとおり、豊見城総合公園(以下「総合公園」という。)の使用許可申請書を提出した(以下、6の申請と併せて「本件各申請」ということがある。)。

申 請 者 県学連(琉大自治会) 木村康夫

行為の目的 集会

行為の内容 反戦・平和をアピールするため

使用する面積 児童・幼児広場、駐車場(I)

行為の期間 平成五年四月二五日午前八時から午後五時まで

集会参加人数 約一〇〇名

8 被告村長は、同年三月三一日、原告学生会に対し、右各申請について、本件条例一五条一項三号にいう管理上支障があると認めるときに該当するとして、一括して不許可の処分をした(以下「本件不許可処分」という。)。

二  争点

1 原告らの主張

(一) 本件不許可処分の違法性

被告村長は、本件条例にいう管理上支障があると認められる具体的な事情が何ら存しないにもかかわらず、警察の圧力によって、本件不許可処分を行ったものであり、憲法二一条、地方自治法二四四条二項、三項、本件条例二条四項五号(この点、被告は、本件不許可処分において、その根拠条文を、本件条例一五条一項三号としているが、これは、被告が条文の適示を誤ったものである。)の解釈適用を誤ったものであり、被告村長のした本件不許可処分は、違法である。

(二) 権利侵害

原告らは、本件不許可処分によって、植樹祭が行われた糸満市に隣接する被告村内において集会を行うことができず、植樹祭の会場から遠く離れた那覇市内で集会を行うことを余儀なくされ、このため、原告らは、植樹祭の会場の近くで、天皇来沖、植樹祭開催反対の集会を行うという所期の目的を達成することができなかったほか、右会場近くのデモ出発地点まで自動車で移動せざるを得なかったなど、無用な行動及び出費等を強いられ、無形の損害を受けた。

(三) 被告の責任

被告村長の本件不許可処分は、国家賠償法一条にいう公権力の行使に当たり、かつ、前記のとおり違法性があるから、被告は、同条に基づき、原告らに生じた無形損害を賠償する義務がある。

(四) 損害

(1) 無形損害

本件不許可処分によって原告らが受けた前記損害を金銭に換算するならば、それぞれ一〇〇万円を下らない。

(2) 弁護士費用

原告らは、本件訴えを提起するに当たって、原告ら訴訟代理人弁護士らに訴訟行為を委任し、着手金及び謝礼金として、それぞれ各二〇万円を支払う旨約した。

2 被告の主張

(一) 本件各申請は、原告学生会がしたものであり、被告村長の本件不許可処分も、原告学生会に対してされたものであるから、原告県学連の本件請求は何らの根拠もないので、棄却されるべきである。

(二) 被告村長は、原告らの本件各申請は、いずれも以下の理由から、本件条例二条四項五号にいう「管理上支障があると認めるとき」に該当するものであり、本件不許可処分は違法ではない。

(1) 総合公園について

沖縄県は、植樹祭を開催するに当たり、被告に対し、開催日である平成五年四月二五日の天皇、皇后の昼食場所として、総合公園に隣接する豊見城村立中央公民館(以下「中央公民館」という。)の使用を申し入れた。

そして、被告は、右申入れを承諾し、総合公園を天皇、皇后の奉迎場所として指定したが、原告学生会が申し込んだ総合公園の使用場所である駐車場(I)は、奉迎の際の一般奉迎場所、沿道警備及び交通整理隊の休憩場所に、児童・幼児広場は、奉迎者の控場所や休憩所にそれぞれ使用されることとなっていた。

右のとおり、原告らの申請に係る使用日時が、天皇、皇后の昼食時と重なっており、申込使用場所も天皇、皇后奉迎のために使用することが予定されていたため、管理上支障があると判断して、原告学生会の申請を不許可とした。

(2) 三児童公園について

原告学生会が使用許可申請書を提出した三児童公園は、主として一〇歳までの児童、幼児等の利用に供することを目的として設置された公園であり、また、設置場所は閑静な住宅街にあり、規模も設置標準面積にも満たない小規模な児童公園であるのに対し、原告学生会の申請内容は、日曜日の終日専用使用であり、使用目的も一〇〇人の大規模な反戦平和アピール集会となっていたことから、このような態様の集会の開催は、地域の子供たちの遊び場を奪うこととなり、更に地域の住民に不安を与えることから、管理上支障があると判断し、不許可処分とした。

なお、被告村長は、那覇警察署に対し、本件各公園について、植樹祭当日の使用許可処分をしているが、これは、原告学生会への不許可処分と直接の関係はなく、パトロール中の少人数の休憩待機のためであり、児童を含む地域住民との共用可能なものである点を考慮して、使用を許可したものである。

(三) 損害については争う。

第三  争点に対する判断

一  前記争いのない事実等、《証拠略》によれば、以下の事実が認められる。

1 原告県学連は、沖縄県内の大学学生自治会の連合体で、最高決議機関として大会、これに次ぐ決議機関として中央委員会を置き、これらの機関の決定の執行機関として執行委員会を置き、執行委員長は、執行委員の中から定期大会において選出され、原告県学連を代表する。

原告学生会は、琉球大学の学生により組織された学生の自治組織で、原告県学連に加盟しており、最高決議機関として学生総会、これに次ぐ決議機関として中央委員会を置き、これらの機関の決定の執行機関として学生会長及び副会長を置き、学生会長は、琉球大学生の中から選出され、原告学生会を代表する。

なお、原告らは、いずれも権利能力なき社団である。

被告村長は、被告を代表し、本件条例により、被告が設置する公園を管理し、その使用許可、不許可その他の処分をする権限を有する、被告の公権力の行使に当たる公務員である。

2 沖縄県糸満市において、第四四回全国植樹祭が、平成五年四月二五日に開催されることとなり、天皇、皇后が、右植樹祭に出席するため、沖縄を訪問することとなった。

3 糸満市では、平成四年一一月二八日、糸満市地域協力会が発足し、植樹祭の成功に向けて、極左集団からの警衛、警護、地域防犯、交通安全等を目的として活動していた。

4 一方、沖縄県は、同年一二月ころ、被告に対し、植樹祭開催当日の平成五年四月二五日に、総合公園に隣接する中央公民館を、天皇、皇后の昼食場所として使用する旨申し入れ、被告はこれを承諾した。

そして、被告は、同年二月ころ、警察等の関係機関と調整し、同年四月二五日当日の植樹祭について、一般奉迎者の奉迎場所や、警護警察官の待機場所等を定め、行幸啓配置図を作成した。

右配置図によれば、総合公園の駐車場部分は、奉迎の際の一般奉迎場所、沿道警備及び交通整理隊の休憩場所、児童・幼児広場は、奉迎者の控え場所や休憩所として使用されることが予定されていた。

なお、右事実は、事柄の性質上、被告総務部長、経済建設部長、総務課長及び村三役を除いて知らされていなかった。

5 原告県学連は、原告学生会を含む加盟自治体とともに、天皇来沖、植樹祭反対の運動に取り組み、植樹祭開催当日、植樹祭会場の近くで、天皇来沖、植樹祭開催反対の集会及びデモ行進を行うことを計画した。

6 元沖縄国際大学自治会副会長金城敏政は、原告らの委任を受け、同年三月二三日、同年四月二五日の集会に使用する公園を借りるため、糸満市役所を訪れた。

7 そして、糸満市職員上原司に、同市内の公園の予約状況を確認したところ、同職員から、同年四月二三日から二七日までの間、糸満市が管理する公園は、全て糸満市地域協力会が終日借り切っているので、原告らに貸すことはできないと説明された。

8 金城は、同市内において集会を開くことができる空地や、公民館の広場等を物色したが、空地の所有者から使用を断られるなど、集会場所を確保することができなかったので、糸満市内において、集会場所を確保することを断念した。

9 次に金城は、原告らの委任を受け、糸満市に隣接する被告村内の公園を借りるため、同年三月二五日、琉球大学学生の大内康夫とともに、被告村役場を訪れた。

10 同年四月一日当時、被告においては、事務分掌規則により、都市公園の整備、管理は、経済建設部都市計画課の職務に属しており、公園の使用許可申請の受付は、同課施設係が担当していた。

そして、公園の使用許可申請があると、都市計画課施設係が、事務決裁規定に基づいて起案をし、決裁区分に従って、都市計画課長、経済建設部長らの上司が決裁をし、村長が使用を許可する手続になっていた。

なお、被告においては、決裁は甲、乙、丙及び丁の四つに区分され、甲は村長まで、乙は助役まで、丙は部長まで、丁は課長までの決裁となっていた。

11 金城らは、同年三月二五日、経済建設部都市計画課施設係浜里和宣に対し、集会場所として公園を借りたい旨申し出たが、デモ行進のコース等植樹祭当日の予定が確定していなかったため、取り敢えず複数の公園を借りることとし、被告村内に所在する平和台児童公園、宜保児童公園及び高嶺児童公園の三児童公園について、それぞれ次の内容の使用許可申請書を提出した。

申 請 者 琉大学生会 木村康夫

行為の目的 集会

行為の内容 反戦・平和をアピールするため

行為の期間 平成五年四月二五日午前八時から午後五時まで

集会参加人数 三〇ないし四〇名

12 右申請の際、金城は、浜里から、右三児童公園よりも総合公園の方が広いと勧められたため、原告県学連の委員長や原告学生会の会長と相談してから申請する旨告げて、被告村役場を辞去した。

13 浜里は、同年三月二六日午前九時ころ、金城らが申請書を提出した三児童公園について、取扱欄を「急」として、「三か所の児童公園については集会を開くのは狭くて無理があり、総合公園を使用させてよろしいでしょうか。」という意見を付して起案し、決裁区分は甲として、決裁に回した。

なお、右起案書には、経済建設部部長赤嶺要善の「総務部とも合議調整をやって下さい。」との意見が付され、更に、総務課長の「当日、中央公民館は、天皇の昼食場所に予定されており、貸出しは問題有り。」との意見が付され、同月二九日付けで村長の決裁印が押された。

14 金城は、協議の上、同月二六日午前一一時ころ、久岡勝とともに、被告村役場を訪れたところ、浜里は、金城らに対し、総合公園については、県警から使用したいとの要請が来ている旨告げた。金城らは、県警から被告に対し、使用許可申請書が正式に書面で出ているのか確認したところ、浜里は、電話での要請はあるが、申請書は出ていない旨答えた。金城らは、総合公園については県警と原告らのどちらに優先権があるのか、また三児童公園については借りることができるのかと尋ねたところ、浜里は、その点については、上司である都市開発課課長に聞いてほしい旨答えた。

15 金城らは、前日申請した三児童公園の許可申請について、それぞれ集会参加人数を三〇ないし四〇名から一〇〇名に増加し、総合公園についても、被告に対し、次の内容の使用許可申請書を提出し、被告はこれを受理した。

申 請 者 県学連(琉大自治会) 木村康夫

行為の目的 集会

行為の内容 反戦・平和をアピールするため

使用する面積 児童・幼児広場、駐車場(I)

行為の期間 平成五年四月二五日午前八時から午後五時まで

集会参加人数 約一〇〇名

そして、許可の見込みについて同課課長から話を聞くため、同年三月二六日の午後に再度訪れることとした。

16 金城らは、同日午後再び被告村役場を訪れ、被告の都市計画課課長新垣栄喜及び浜里が、金城らと応対した。

金城が、総合公園について、県警から公園の使用許可申請書が出ているのか確認したところ、浜里は、総務課長に連絡して確認したところ、申請書等の書類は出ていないが、電話で要請があった旨答えた。

新垣は、児童公園は、子供たちの遊戯に寄与していく場であり、また、集落の中にあるため、ゲートボール等の地域の行事が慣例上優先する旨述べた。

また、新垣は、三児童公園の申請時間が午前八時から午後五時までとなっている点について、時間が長すぎる、昼間の時間を全部使用されると、子供たちが締め出されるので困る旨述べたところ、久岡は、時間の調整は可能である旨述べた。

17 金城らは、浜里や新垣らの対応から、原告らに対し、集会を開くために公園を使用させることに難色を示していると考え、同月二九日、再度被告村役場に要請に行き、浜里及び上原と面談したところ、浜里は、児童公園については、子供達の遊び場であり、子供達に優先権があり、原告らに貸した場合に子供達が遊べなくなるので貸せない、また、総合公園について、グラウンド部分を除いて残りは全て警察から使用したいとの要請が出ている、使用許可申請書等の書類を二五日付けもしくは二六日付けで総務課の方で受け付けているかもしれないが、都市計画課には、まだ書類が来ていない旨答えた。

18 そして、同月二九日午後、被告において、被告村長、助役、経済建設部長、総務課長らが出席した会議で、本件各申請に係る協議がされ、本件各申請を不許可とすることが決定され、浜里に対し、右各申請を不許可とする内容の起案をするよう指示があった。

19 一方、原告らは、被告らの対応から、被告村内においても、集会の開催のための公園等の場所の確保ができないことが明らかになったと考え、同日、那覇市に対し、那覇市字具志に所在するあさがお公園について、公園の使用許可申請をし、同日付けで、次とおりの条件で使用許可を受けた。また、原告らは、同様に、同年四月二日、同市に対し、ゆうがお公園について使用許可申請をし、同日付けで、同様の使用許可を受けた。

(一) あさがお公園について

申 請 者 沖縄県学連 大内力

行為の目的 集会

行為の内容 反戦・平和を訴える

使用する面積 九六〇平方メートル

行為の期間 平成五年四月二五日午前七時から午後四時まで

集会参加人数 二〇〇名

(二) ゆうがお公園について

申 請 者 沖縄県学連 大内力

行為の目的 集会

行為の内容 反戦・平和をアピールするため

使用する面積 六〇〇平方メートル

行為の期間 平成五年四月二五日午前八時から午後五時まで

集会参加人数 一〇〇名

20 浜里は、上司からの指示を受けて、同年三月三〇日、本件各申請について、いずれも不許可処分が相当である旨の意見を付して起案した上で決裁に回し(決裁区分は甲、取扱欄は急)、翌三一日、被告村長の決裁を受けた。被告村長は、同日、原告学生会に対し、本件各申請について、公園の使用を許可してならない事由を定める本件条例一五条一項三号の「管理上支障があると認める」ときに該当するとして、本件不許可処分をした(なお、右は、本件条例二条四項五号の誤りであると解される。)。

21 また、浜里は、同月三〇日、本件各申請に係る四公園を含む九公園について、同年四月一日付けで、那覇警察署に対し、以下の条件で許可が相当である旨の意見を付して決裁に回し(取扱欄は急)、同月三一日、被告村長の決裁を受けた。

公園及び場所

総合公園(字平良四八九番地の一)

宜保児童公園(字宜保一五六番地の三)

平和台児童公園(字我那覇四二六番地の八一)

高嶺児童公園(字高嶺七三番地の一)

我那覇児童公園(字我那覇一八九番地の三)

ニュータウン1号公園(字根差部一二三番地の一)

ニュータウン2号公園(字根差部一〇八番地の一四)

白ゆり児童公園(字我那覇二九六番地の三)

根差部児童公園(字根差部一三四番地の一)

目 的 休憩及び待機

内 容 同

使用する面積 申請に係る公園全部

行為の期間 平成五年四月二三日から同月二六日まで

22 そして、被告村長は、同年四月一日付けで、那覇警察署長に対し、同月二三日から二六日にかけて、申請に係る九公園の使用を許可し、そのころ那覇警察署長に通知した。

23 なお、那覇警察署長から、被告村長に対し、同月二三日から二六日までの間、植樹祭の警備部隊の休憩及び待機場所として、右九公園の使用を要請する旨の同年三月二五日付けの書面(以下「要請書」という。)及び那覇警察署長申請に係る同日付けの右九公園の許可申請書が提出され、右要請書は、被告総務課において、同年三月二五日受付豊総総第五-一九号として受理された。

そして、同書面には、「上記公園(右九公園)借用については、専用使用ではなく、地域住民も使用出来る共同借用とする旨、那覇警察署と調整ずみ。」という総務課長の意見が付されている。

24 原告らは、同年四月二五日、あさがお公園において、午前八時三〇分から午前九時三〇分までの間、約一二〇名余りが参加して集会を開催し、集会終了後、被告村内の豊見城高校付近までマイクロバス三台、ボンゴ型車両三台で移動し、同所付近から国道三三一号線を南下して、糸満市内の高瀬緑地公園までデモ行進を行った。

25 本件各申請に係る公園の規模及び内容は、以下のとおりである。

(1) 総合公園

所 在 地 沖縄県島尻郡豊見城村字平良四八九番地一

都市計画決定 昭和五六年一二月二四日

(未完成のため、設置年月日は特定できない。)

全体計画面積 一一一九八八平方メートル

一部供用面積 五九二六四平方メートル

施設概要 陸上競技場(多目的広場) 一

テニスコート 三

水泳プール 一

ゲートボール場 四

幼児広場 一

児童広場 一

遊戯広場 一

駐車場 一

沿革概要

本公園は、被告村のほぼ中央に位置し、隣接して中央公民館、社会福祉センター等の公共施設がある。そのため、住民全般の休息、観賞、散歩、遊戯、運動等総合的な利用に供することを目的に整備を進めている。

(2) 宜保児童公園

所 在 地 沖縄県島尻郡豊見城村字宜保前原一五六番三

設置年月日 昭和六〇年四月一日

設置面積 一五八〇・五〇平方メートル

(法定標準の約六三パーセントの面積)

施設概要 修景施設 種類、数量各一

休養施設 種類二、数量六

遊戯施設 種類五、数量六

便益施設 種類、数量各一

管理施設 種類二四、数量二六

その他 種類、数量各一

沿革概要

本公園は、被告村で最初の児童公園で、宜保部落の南側に位置している。同部落の拝所跡で、既存木が多数残っている。そのため野鳥等も数多く観察できる公園である。同公園は、昭和五九年一月九日に計画決定し、昭和六〇年四月一日公園の供用が開始された。

多目的広場 なし

駐車場の施設 なし

(3) 平和台児童公園

所 在 地 沖縄県島尻郡豊見城村字我那覇漢謝原四二六番八一

設置年月日 平成元年八月二日

設置面積 一七二八・九〇平方メートル

(法定標準の約六九パーセントの面積)

施設概要 修景施設 種類、数量各二

休養施設 種類三、数量六

遊戯施設 種類、数量各五

運動施設 種類、数量各一

便益施設 種類、数量各一

管理施設 種類二七、数量二九

沿革概要

本公園は、平和台自治会西側の一角にあり、東シナ海、瀬長島等を一望できる位置にある。昭和五一年都市計画法二九条の開発行為により設置された公園で、昭和五五年一一月八日被告に所有権移転され、平成元年八月二日に供用が開始された。

多目的広場 あり(面積 三一二平方メートル)

駐車場の施設 なし

そ の 他

設置面積は他の児童公園に比べ広いが、傾斜地の段々を利用して造った北西に細長い公園で、多目的広場のみが、平地として中心的に遊べる場所で、他は遊具等が設置されている。

(4) 高嶺児童公園

所 在 地 沖縄県島尻郡豊見城村字高嶺七三番一

設置年月日 平成三年五月一八日

設置面積 一二五九・二〇平方メートル

(法定標準の約五〇パーセントの面積)

施設概要 修景施設 種類、数量各一

休養施設 種類二、数量一二

遊戯施設 種類、数量各五

便益施設 種類三、数量四

管理施設 種類一四、数量三四

その他 種類、数量各一

沿革概要

本公園は、旧県道七号線沿いの高嶺公民館に隣接している。子供達の緑地社会の中心的な公園となる。平成元年九月四日に計画決定し、平成三年五月一八日に公園の供用が開始された。

多目的広場 あり (面積 三三六平方メートル)

駐車場の施設 なし

そ の 他

傾斜地を利用してできた公園で、古い部落内にあり、部落内には平地がないことから、子供達の緑地社会の中心的公園であり、老人の憩いの場としても利用されている。多目的広場は三三六平方メートルで、そこに至るまで多種多数の遊具が設置されており、また、公園道路は、付近住宅の出入口の道路としても使用されている。

26 原告県学連が那覇市から借用した公園の規模及び内容は、以下のとおりである。

(1) あさがお公園

所在地 那覇市字具志一一二番地の一

設置年月日 昭和五六年六月一日

設置面積 一〇〇〇平方メートル

公園の概況 多目的広場と遊具地域は画然と区別されていないが、中央部が一辺の長さ約一〇メートル×約一九メートル×約一八メートル×約一七メートルの不定形四角形の空地となっており、その周辺に遊具や樹木が散在している。

(2) ゆうがお公園

所在地 那覇市字具志五五一番地の一

設置年月日 昭和五六年六月一日

設置面積 一三〇〇平方メートル

公園の概況 多目的広場と遊具地域は画然と区別されていないが、中央部が一辺の長さ約一九メートル×約二一メートル×約一八メートル×約二五メートルの不定形四角形の空地となっており、その周辺に遊具やベンチ等が散在している。

二  以上の事実に照らして、本件不許可処分の違法性の有無について検討する。

1 被告の設置した本件各公園は、地方自治法二四四条にいう公の施設に当たるから、被告は、正当な理由がない限り、住民がこれを利用することを拒んではならず(同条二項)、また、住民の利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条三項)。本件条例は、同法二四四条の二第一項に基づき、公の施設である本件各公園の設置及び管理について定めるものであり、本件条例二条四項の各号は、その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものであると解される。

そして、地方自治法二四四条にいう普通地方公共団体の公の施設として、本件各公園のように集会の用に供し得る施設が設けられている場合、住民は、その施設の設置目的に反しない限り、その利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当な理由なくその利用を拒否するときは、憲法二一条の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれが生ずることになる。したがって、本件条例二条四項五号を解釈適用するに当たっては、本件各公園の使用を拒否することによって憲法の保障する集会の自由を実質的に否定することにならないかどうかを検討すべきである。

2 このような観点からすると、集会の用に供される公共施設の管理者は、当該公共施設の種類に応じ、また、その規模、構造、設備等を勘案し、公共施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって、これらの点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらず、その利用を拒否し得るのは、利用の希望が競合する場合のほかは、施設をその集会のために利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるものというべきであり、このような場合には、その危険を回避し、防止するために、その施設における集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがあるといわなければならない。そして、右の制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは、基本的には、基本的人権としての集会の自由の重要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や、侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。

本件条例二条による本件各公園の使用の規制は、このような較量によって必要かつ合理的なものとして肯認される限りは、集会の自由を不当に侵害するものではなく、憲法二一条に違反するものではない。

そして、このような較量をするに当たっては、集会の自由の制約は、基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから、経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下にされなければならない。

3 本件条例二条四項五号は、「管理上支障があると認める」ときを、公園の使用を許可することができない事由として規定しているが、前記趣旨からして、同号は、本件各公園における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件各公園で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が、優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、右危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。

そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法二一条に違反するものではなく、また、地方自治法二四四条に違反するものでもないというべきである。

そして、右事由の存在を肯認することができるのは、そのような事態の発生が許可権者の主観により予測されるだけではなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合でなければならないことはいうまでもない。

4 以上を前提として、本件不許可処分の適否を検討する。

(一) 原告県学連の請求の可否について

被告は、本件不許可処分の名宛人は、いずれも「琉球大学学生会」であり、原告県学連は、本件不許可処分の相手方ではないので、原告県学連については、不法行為が成立し得ない旨主張する。

しかしながら、前記のとおり、原告学生会は、原告県学連の傘下組織で、両団体の住所は同じであり、両者は、一体となって植樹祭の開催に反対する運動をしてきたこと、金城は、原告県学連及び原告学生会の双方の委任を受けて、原告らが集会に使用する公園を探し、被告と交渉したこと、金城は、平成五年三月二五日に、三児童公園について、申請者名を「琉大学生会」と記載した上で、当時の原告県学連代表者である「木村康夫」を並べて記載していること、翌二六日に申請した総合公園については、申請者欄に「県学連(琉大自治会)」と記載した上で、並べて「木村康夫」と記載していること、同月二五日に総合公園を勧められた際、金城は、原告県学連の委員長とも相談してから申請する旨告げていることが認められる。

以上の事実からすれば、原告県学連及び原告学生会は、共同して集会を開くため、金城に委任して、被告に対し、公園の各使用許可申請書を提出したものであると認められ、被告においても、総合公園の申請書の記載及び前記交渉の経緯等から、十分これを認識していたものといわなければならない。

したがって、原告県学連は、実質的にみれば本件申請をし、また、当然に本件不許可処分の対象となっており、これにより、実質的に不利益を被ったといえるのであり、かつ、被告もその点を十分認識していたのであるから、書面上本件不許可処分の名宛人が、原告学生会のみであることをもって、原告県学連に対する不法行為が成立しないということはできず、この点に関する被告の主張は採用できない。

(二) 本件不許可処分の違法性について

(1) 総合公園の不許可処分について

まず、総合公園の不許可処分について検討すると、前記のとおり、被告は、平成四年一二月ころ、植樹祭が開催される平成五年四月二五日の天皇、皇后の昼食場所として、総合公園に隣接する中央公民館を使用することを決定し、同年二月ころに、関係機関と協議して、行幸啓配置図を作成したこと、右配置図によれば、総合公園内の駐車場部分は、奉迎の際の一般奉迎場所、沿道警備及び交通整理隊の休憩場所に、児童広場は、奉迎者の控え場所や休憩所として使用されることが予定されたこと、右事実は、外部秘とされ、被告村総務部長、経済建設部長、総務課長及び村三役を除いて知らされていなかったことが認められる。

これに対し、原告らは、当初は、集会場所として、児童公園を使用することを予定して、同年三月二五日に三児童公園について許可申請書を提出したが、右中央公民館の使用の事実を知らされていなかった浜里から、集会場所としては、総合公園が児童公園より広いのでそちらを使用した方がよいのではと助言されたことから、翌二六日、右三児童公園に追加して、総合公園の児童広場、幼児広場及び駐車場について、使用許可申請書を提出したことが認められる。

以上の事実からすれば、総合公園については、原告らの申請に先立つ平成五年二月の時点で、既に被告と警察等の関係機関で協議し、植樹祭の警備等に使用することが内部的に決定されていたものであり、原告らに、同公園の使用を許可する余地はなかったものといわなければならない。

もっとも、被告においては、公園の使用許可を受けようとする者は、許可申請書を村長に提出しなければならず(本件条例二条)、右許可申請書の受付は、事務分掌上、経済建設部都市計画課施設係であるから、原告らが申請した同月二六日時点において、後述するとおり、正式な許可申請書等が右施設係で受け付けられていない点を検討しなければならない。

しかしながら、前記のとおり、天皇、皇后の昼食場所等は、警備上の必要から外部秘とされ、被告の幹部と警察等の関係機関のみで調整されてきたものであり、関係機関において、正式な許可申請書を作成し、被告に提出し、被告村長が正式にこれを許可する手続を踏まなかったとしても、事柄の性質上、やむを得ないといわなければならない。

したがって、本件においては、原告らが許可申請書を提出する以前から、被告においては、警察が警備に使用する等、関係機関において総合公園を使用することが予定されていたものであり、この点で、原告らと、関係機関の間で利用の希望が競合し、かつ、原告らの使用申請が時間的に劣後する場合に当たるので、被告が、原告らに対し、総合公園の使用を許可しなかったとしても、違法であるとはいえない。

(2) 三児童公園の不許可処分について

三児童公園も、地方自治法二四四条一項にいう「公の施設」に当たるところ、被告は、(1)児童公園はその性質上、専ら児童、幼児等の利用に供することを目的として設置された公園であること、(2)三つの児童公園は、いずれも閑静な住宅街に設置され、規模も設備標準面積に満たない小規模な児童公園であること、(3)原告らの集会は、日曜日の終日専用使用で、一〇〇人の大規模な反戦アピール集会であることから、このような公園での集会は、地域の子供たちの遊び場を奪い、更に地域住民に不安を与えることから、管理上支障があると認められる場合に当たると主張する。

しかしながら、児童公園が主に児童を対象としたものであることはいうまでもないが、前記のとおり、宜保児童公園は、設置面積が一五八〇平方メートル、平和台児童公園は、設置面積が一七二八・九〇平方メートル、多目的広場が三一二平方メートル、高嶺児童公園は、設置面積が一二五九・二〇平方メートル、多目的広場が三三六平方メートルであり、少なくとも平和台児童公園及び高嶺児童公園に設置されている多目的広場は、広さの点からしても、児童以外の利用、例えば集会のために使用することも十分可能であると思われること、一般に、一〇〇名規模の集会であれば、二〇〇ないし三〇〇平方メートルの広さで足りると考えられること、現に、原告らは、植樹祭当日、那覇市の管理するあさがお公園において、約一二〇名が参加して集会を開いているが、同公園の設置面積は一〇〇〇平方メートルであること等からすれば、三児童公園は、いずれも原告らが予定した集会を開くことが十分可能な施設であるといわなければならない。

また、使用時間については、原告らは、申請書には午前八時から午後五時までと記載しているが、被告担当者との交渉の中では、時間については調整する旨述べているのであり、現に、あさがお公園では、約一時間集会を開いた後、デモ行進に移っているのであり、終日専用使用ということを本件各申請を拒否する理由とすることはできないといわなければならない。

そして、原告らは、本件集会において、一〇〇名程度の人数を集め、横が四メートル、高さが一メートルくらいの演壇を作り、そこから発言者が発言して、参加者が腰をおろして右発言を聞き、集会の前後にはシュプレヒコールをして、デモ行進すること等を予定しており、集会の時間は二時間程度を考えていたところ、右の程度の団体行動は、表現の自由の一態様として当然に許容されるべきものであり、仮に、一時的にしても、主として児童、幼児等の利用に供するという児童公園の本来の設置目的に反し、児童らの利用に影響を与え、また、周囲の閑静さが一時失われることがあるとしても、表現の自由の重要性にかんがみれば、それらの利益も合理的な範囲で制約を受けてもやむを得ないといわなければならない。

そして、原告らが、集会を開催した場合、公園近隣の住民等の生命、身体又は財産が侵害される危険の発生が、客観的事実に照らして、具体的に明らかに予測されるという事情は、何らうかがわれないことを併せ考えれば、被告において、原告らに対し、「管理上支障があると認める」ことを理由として、三児童公園の使用を不許可としたことは、憲法二一条、地方自治法二四四条に違反する違法なものであるといわなければならない。

なお、前記のとおり、那覇警察署が、原告らの本件各申請に係る四公園を含む九公園について、植樹祭当日の平成五年四月二五日を含む同月二三日から二六日までの四日間、植樹祭に伴う警備部隊の休憩、待機のため、被告から使用許可を受けた事実が認められるが、この点をどのように評価すべきかについて付言する。

前記認定のとおり、那覇警察署から被告村長に対し、右九公園について同年三月二五日付け要請書及び許可申請書がそれぞれ提出され(なお、右要請書及び許可申請書は、別個の書面であると認められる。)、右要請書は、被告総務課において、同日付けで、「豊総総第五-一九号」の受付印が押されている。

一方、原告らは、本件各申請に係る四公園について、平成五年三月二五日に三児童公園を、同月二六日に総合公園の許可申請書を提出した。

そこで、那覇警察署から被告に対する右要請書及び許可申請書が、同月二五日に提出されていたとすれば、本件各申請に係る四公園については、那覇警察署と原告らとの間で、申請が競合していたこととなり、この点で、申請の競合を理由として、原告らの使用を不許可とし得るかについて検討しなければならない。

ところで、前記のとおり、被告においては、公園の使用許可申請の受付は、経済建設部都市計画課施設係が担当していたところ、金城らが、同月二六日に、総合公園を借り受けるために被告村役場を訪れたときに、同課施設係職員浜里は、総合公園について、植樹祭当日に使用したいとの要請の電話が県警から総務課に対してあった旨答えたが、正式な使用許可申請書等の書面は出ていないと答えていること、金城らが、同日及び同月二九日に、浜里や新垣らと、児童公園の借用について交渉していた際に、児童公園について、警察から使用の要請があるとの話は一切出ていないこと、浜里は、原告らからの許可申請に対しては、三児童公園について申請のあった日の翌日の同月二六日に、取扱欄を「急」として、起案書を作成し、一旦決裁に回しているところ、那覇警察署からの申請については、同月三〇日、原告らに対し、四公園の使用を不許可とする内容の起案書を新たに作成するとともに、那覇警察署に対する九公園の使用を許可する内容の起案書を作成し(取扱欄はいずれも「急」)、決裁に回していることからすれば、同月二五日の時点では、那覇警察署から、九公園の使用申請について、正式な書面の提出がされていなかったのではないかとの疑いが残り、少なくとも同日の段階では、被告における公園の使用許可申請の受付窓口である経済建設部都市計画課施設係には、那覇警察署からの使用許可申請が正式に受け付けられていなかったことは明らかであり、本件が、原告らと那覇警察署の申請が競合した場合であると考えるとしても、那覇警察署の申請が、原告らのそれに時間的に優先する関係にあるということはできない。

それでは、なぜ原告らの申請が不許可になり、那覇警察署の申請が許可になったのか、その合理性について検討しなければならないが、原告らの申請を拒否すべき理由がないことは前記のとおりであり、これに対し、那覇警察署の申請を原告らのそれよりも優先すべき明確な理由の主張は被告からはなく、その立証もない。そうであれば、仮に、原告らに対する不許可処分が出される前に、何らかの理由で那覇警察署から公園の使用許可申請が提出され、申請が競合する場合に当たるとしても、直ちに原告らに対する不許可処分を正当化するものでないことはいうまでもない。

(三) 原告らの損害について

(1) 無形損害

原告らは、前記のとおり、いわゆる権利能力なき社団であるところ、本件不許可処分により、被告村内において、植樹祭当日の集会を開くことができなくなり、集会の開催のための公園利用という享受すべき権利を侵害されたものであり、その結果、植樹祭開催場所から離れた他の市町村において、公園を借用することを余儀なくされ、那覇市から、同市字具志に所在するあさがお公園及びゆうがお公園を有料で借り受けたこと、植樹祭当日は、あさがお公園において集会を行い、被告村内から糸満市に向けてデモ行進を行うため、同公園からデモ開始場所である豊見城南高校前まで移動するため、レンタカーを用意せざるを得なくなるなど、物的、人的被害を被ったことが認められ、これを金銭に評価すれば、各原告について、それぞれ三〇万円と認めるのが相当である。

(2) 弁護士費用

本訴提起のための弁護士費用は、事案の性質、認容額等に照らして、各原告につきそれぞれ六万円と認めるのが相当である。

第四  結論

以上によれば、原告らの本訴請求は、それぞれ三六万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成五年七月二一日からそれぞれ支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木村元昭 裁判官 近藤宏子 裁判官 村越一浩)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例